EC-CUBE開発元の株式会社ロックオンが運営する「ネットショップの壺」にて、ネットスーパーについて面白い記事がありましたので、紹介させていただきます。
ネットスーパー、EC企業の間でリードタイム短縮競争が激化しています。翌日配送や時間指定配送は顧客の利便性向上に加え、企業の在庫削減や業務効率化にも寄与します。リードタイム短縮の実現には、業務プロセスの見直しやシステム改修が必要です。
在庫管理の上手い企業は業績が上がります。売り上げの機会損失を防ぎ、無駄なコストを省けるからです。保有在庫を軽減すれば、利益率が向上し、資金繰りも改善されます。
最近のEC事業でよく見られる翌日配送・時間指定配送を物流の観点から見ると、少し違った意味合いが見えてきます。再配達を抑止し顧客の利便性を向上させる文脈で語られる場合の多い施策ですが、リードタイムの短縮によって保有在庫の軽減にもつながるのです。
目次
リードタイム短縮事例
「注文後すぐに届く」昨今のEコマース業界における最大のテーマとなっています。例えば、アマゾンジャパンは2015年11月、受注後1時間以内に商品を届ける「Amazon Prime Now」を都内で導入しました。アマゾンに対抗するように、楽天やヨドバシカメラ、ゾゾダウンも即日配送を開始しています。多くのユーザーにとって、注文後すぐに届くことは当然の条件になってきました。
・ネットスーパー、通販に広がる時間指定配送
大手EC事業者だけでなく、先進的なネットスーパーや通販サイトでも注文から配送までのリードタイムを短縮させる取り組みが広がっています。
ネットスーパー事業を展開するイオンでは千葉の店舗において1時間以内に配送する「お急ぎ便」の実験を開始しています。他のEコマース業者では取り扱いの少ない生鮮食品がすぐに自宅へ届けられるため、急な食材調達や体調が崩した際の買い物代行といったニーズを取り込んでいく狙いです。
オフィス用品の翌日配送で知られるアスクルですが、個人向け通販サイトLOHACOにおいて、時間指定配送を2016年8月末から開始すると発表しました。「ハッピー・オン・タイム」と呼ばれる新サービスでは届け時間を1時間単位で指定可能で、配送時刻直前にはスマートフォンへ通知が届きます。自宅を不在にせず、予定通りに商品を受け取れるため、顧客の利便性を多いに高めます。
リードタイム短縮によるメリット
小売り・流通業において、最も重要な経営課題は在庫管理といっても過言ではありません。在庫は保持しているだけでコストがかかり、その管理は手間を要します。さらに、在庫が不足すれば売り上げのチャンスを逃してしまう一方で、在庫が過剰になれば現金が不足し、倒産のリスクさえ発生します。先述のリードタイム短縮・時間指定配送の取り組みは、在庫管理適正化に寄与します。
・ジャスト・イン・タイム
在庫管理の理想は“在庫ゼロの実現”であり、必要になった時に必要なだけ生産する「ジャスト・イン・タイム方式」は優れた管理手法とされます。トヨタ生産方式で知られた、この手法をEC事業で実現するのが、リードタイム短縮の流れと考えられるでしょう。
リードタイム短縮を実現するには、需要を予測し、必要な際に必要な分だけ配送できるよう備える必要があります。例えば、特定の地域である商品の需要が増えそうであれば、その地域の配送センターにあらかじめ商品を蓄えておくような施策が考えられます。知恵を絞ってリードタイム短縮を実現することが、在庫の圧縮、ひいてはコスト削減につながるのです。
・ロボットとビッグデータ導入によるスピード化とコスト削減
前述のアスクルは物流拠点にロボットを導入し、出荷までの時間短縮を図っています。高精度の画像認識システムと、異なる形状でも正確に取り扱えるロボットアームを駆使し、自動で倉庫からの出荷を行う予定です。時間と手間がかかっていた人手の作業を省き、リードタイム短縮を実現します。
さらに、指定された配送時間を守るためにビッグデータ分析によって精度向上を図る取り組みも進めてきました。道路の渋滞や天候、ドライバーの位置情報などの大量データを蓄積し、ビッグデータ分析を適用します。到着時刻に影響する要因を見出し、配送時間通りに商品が届けられるよう、配送車両運行の最適化を目指します。
システム改修・リニューアルの必要性
リードタイム短縮、及び在庫削減を実施するには何が必要になるでしょうか。まずは、業務プロセスを見直し、リードタイムに影響する要因を特定する作業が必要になります。在庫管理上の問題が解決できなければ、翌日配送や時間指定配送の実現は不可能です。
・時間指定フォーム改修の注意点
ECサイトで顧客が商品を注文する際に、時間指定を行う場合、システム改修が必要になるケースが多くなります。具体的には、顧客が住んでいる地域によって、配送予定日時が変わってくるため、注文時にその都度、計算する仕組みを導入しなければなりません。同様に、宅配業者毎に条件が異なるので、不都合が生じないよう調整する機能が必要です。
注文から配送までの時間が短い場合、注文キャンセルやクレジットカード未決済が起きた場合の流れを検討する必要もあります。システム上の改修や改変が行いやすいよう、システムのリニューアルを視野に入れておくと良いでしょう。
まとめ
EC事業においてリードタイム短縮は当然のものとなり、翌日配送や時間指定配送が行えない企業は競争力を失う可能性があります。再配達を防ぐのは、顧客の利便性はもとより、企業の業務効率化にも寄与するため、注目が高まっています。
需要予測や出荷・配送業務の最適化を通して、リードタイム短縮は在庫削減につながります。在庫削減は企業の利益率向上や資金繰りの改善に効果があります。業務プロセスの見直しやシステムの改修・リニューアルが必要になるケースもあるため、計画的にリードタイム短縮に取り組むようにしましょう。