目次
はじめに
ユーザーのニーズを満たすプロダクトを作るには、「カスタマージャーニー」と呼ばれる顧客が商品と出会い購入するまでの行動を理解することが重要です。
ユーザーがどのように製品を使用しているかを知ることができなければ、コンバージョンを向上させるための施策は、暗闇の中で行われているような状態で非常に効率が悪いです。カスタマージャーニーを知るために、多くのマーケターはファネル分析を利用して、ユーザーの行動を目に見える形に図式化しています。
しかし、コンバージョンファネルは画一的なフレームワークではなく、製品や業界によって異なります。その違いを明確にすることで、独自のファネル分析を行い、ユーザーのコンバージョンまでの道のりを効率化させることができます。
ファネル分析とは?
ファネルとは、カスタマージャーニーを表し、ユーザーがコンバージョンに至るまでにたどる道筋を描いたものです。
AIDAモデルとして知られる典型的なファネルは、「Awareness(認知)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Action(行動)」の4つのステップで構成されています。
- Awareness:ユーザーが製品について知っていて、ユーザーが関心を持っている状態
- Interest:ユーザーが製品に興味を持って接するようになった状態
- Desire:ユーザーが製品の価値を実感して、コンバージョンへの動機付けをする状態
- Action:ユーザーがコンバージョンした状態
各ステップは、企業の業種によってユーザーアクションが異なります。
ファネル分析の目的は、カスタマージャーニー全体を通して、ユーザーが次のステージに進むのに躊躇っている摩擦点を特定することです。これらを特定することにより、解決策を試行錯誤し、より多くのユーザーをゴールへと導くことができます。
B2B SaaSサービスのファネル分析
B2BのSaaS製品とは、Zoom、Microsoft、AWS、Salesforce等を代表するB2B向けクラウドサービスの事を言います。
それらはユーザーがビジネス上のタスクを完了するのを支援し、サブスクリプションで運営されているものが大半を占めています。この分野でよく見られるコンバージョンファネルは、(もちろん、これだけではありませんが)無料から有料へのコンバージョンパスです。
企業は、より多くのユーザーを惹きつけるために製品の無料バージョンを提供し、その後、制限付きの機能でサブスクリプションへの契約を促します。
この例では、購読ランディング画面とアップグレードコンバージョンステップの間で最も大きな差があることがわかります。これにより、次のような仮説を立てられます。
- ターゲティングの問題であり、ハイインテントユーザーをターゲットにしていない可能性がある
- タイミングの問題であり、アップセルが適切なタイミングでないという可能性もある
後者の仮説では、ユーザーがアップグレードを検討する前に、無料プランの価値を得る時間が必要だと考えられます。あるいは、有料機能がどのようなものであるか十分に理解できていないとも考えられます。この場合、有料機能の価値の認知度を向上させる必要があります。より細かな分析とユーザーリサーチを組み合わせることで、問題の核に焦点を当てて解決策を導き出すことに大きくつながります。
ケーススタディ
とあるサービスでは、成長率が上がらない事を問題点とし、ファネル分析をしました。
ファネル分析の結果、サービス内の特定の機能(今回は例として「ブラウザ拡張機能」とします)は、ほとんどのユーザに使われていない事が判明しました。そして、「ブラウザ拡張機能」を使用したユーザは、コンバージョン(契約継続)に至る可能性が非常に高い事もわかりました。
そこで、「ブラウザ拡張機能」をより目立つ所に配置したところ、契約継続率が2倍にもなりました。
ファネル分析と行動コホートを組み合わせることで、もう一つ驚くべき発見がありました。なんとユーザーは予約ミーティングよりも即席ミーティングを多く行っていたのです。そこで、製品チームは製品ロードマップを変更し、即席ミーティングをより簡単にするためのアップデートをリリースすることにしました。
消費者向けテックサービスのファネル分析
この分野には、生産性向上アプリやモバイルゲームなどの日常生活におけるデジタルツールが含まれます。この分野のファネルを理解するために、仮想のコーヒーアプリで考えてみます。このアプリを使えば、行列に並ぶことなく、遠隔操作で注文し、受け取ることができます。
メニューの詳細を見てから「注文をカートに入れる」までの間の離脱が激しいことが分かります。。より多くのユーザー獲得のために、コーヒーアプリのチームは、サイトのの上部に最も人気のメニューを表示することで、より多くの「注文をカートに入れる」を完了させることができるかを試すことができます。
ケーススタディ
とあるコンシューマーサービスでは、フィットネス会社とユーザのマッチングを支援するプラットフォームを提供しています。ユーザーは、アプリを使ってクラスの検索や予約、目標の管理を行うことができます。
プラットフォーム内で新機能を発表後、その機能がどのような影響を与えるかを確認する為にファネル分析をしました。その結果、該当機能を利用したユーザーは、1週間あたりのクラス予約数が24%増加することがわかりました。この結果を元に、該当機能を目立つ場所に配置しました。
また、ファネル分析により、再予約ボタンからクラスを見た場合は、他の方法でクラスを閲覧した場合に比べてコンバージョン数が4.5倍多いことも確認できました。
ECサイトのファネル分析
ECのファネル分析では、ウェブサイトの「閲覧開始」から「購入完了」までのオンラインショッピングの導線を追跡します。マーケティング担当者は通常、ソーシャルメディアや検索広告、ディスプレイ広告などのユーザーのタッチポイントもトラッキングします。
ECを運営している企業がファネル分析を行うと、上の図にあるように、商品をカートに入れた後に多くの離脱ユーザーがいることがよくあります。この段階でのユーザーは、既に商品に対する興味があるため、購入完了する確率が高いのです。つまり、ここでの改善は効果が高いと想定されます。
改善案はいくつかありますが、
- 決済フローの手間を減らす
- メール通知を使ってリマインドする事でカゴ落ちを防ぐ
- ページ上のポップアップ通知を使ってリマインドする事でカゴ落ちを防ぐ
などがあります。
ECのファネル分析については、詳しくはこちらの記事でも紹介しております。
ケーススタディ
とある宅配サービスでは、ユーザ行動をファネル分析し、コンバージョンファネルの異なる行動に対してA/Bテストをしました。このファネルは、有料プラン会員登録が完了する事をコンバージョンとしました。
中南米の宅配アプリRappiは、Amplitudeを使ってコンバージョンファネルの異なるバージョンをA/Bテストしました。このファネルは、Rappiのプライムプログラムの会員になるためのコンバージョンをトラッキングするもので、無料配送オプションやその他の特典が付いた月極め購読で構成されています。
ある実験では、「無料トライアル」と「低価格トライアル」のどちらが、より多くの購読申し込みに繋がるかを検証しました。その結果、1カ月間の低価格トライアルを利用したユーザーは、トライアル終了時にメンバーシップへ加入する確率が25%高いことが判明しました。
これをきっかけに、Rappiは送料に関する実験も行いました。プライムユーザーでないユーザーは、送料が掛かると購入ファネルが大幅に低下することがわかったのです。そこでRappiは、一定額以上の送料を無料にすることで、その傾向が変わるかどうかを検証しました。その結果、送料を無料にすることで、15%以上の注文を促すことができました。
ファネル分析は、実験がマイナスの影響を与える場合も特定するのに役立ちました。送料の加算を、カートの段階から決済の段階に移す実験を行ったところ、ファネルでは、その段階を完了するユーザーが5%増加したことが確認されました。しかし、ファネルの最終段階には下流の影響があり、注文総数が5%減少しました。ファネル分析の結果、一見すると成功したように見える実験も、実は正しいアプローチではなかったことが分かりました。
メディアサイトのファネル分析
報道機関やストリーミング・プラットフォームなどのメディア企業は、ユーザーがどのようにコンテンツを利用しているかを理解するために、ファネル分析が重要になります。
上の図は、仮想のストリーミングサービスを想定したものです。「ユーザー登録」のステップと「曲やビデオの検索」のステップの間で、最も大きな離脱が発生しています。つまり、ここで多くのユーザーが離脱してしまう原因を調査する必要があります。
メディア大手のNBCは、ユーザーがVizio TVでどのようにコンテンツを消費しているか、ファネル分析を行いました。そして、一部のユーザーに対して、新しいホームページ体験のテストを試みました。この試みは成功し、視聴率は10%上昇したため、NBCはこの体験をユーザー全体に拡大することにしました。
NBCはまた、ファネル分析を使って、視聴者の履歴に基づいて表示をパーソナライズするという、別のホームページを試みました。この取り組みにより、7日目のリテンション率が2倍になりました。
裏を返せば、何がうまくいっていないかを特定することは、何がうまくいっているかを知ることと同じくらい重要です。NBCのファネル分析では、レーティング機能が目標指標に影響を与えないことが判明しました。そのため、この機能にさらなる時間とリソースを費やす前に、すぐに開発を中止することができました。
あなたのファネル分析をレベルアップさせよう
ファネル分析は、コンバージョン、エンゲージメント、リテンションを改善する方法を模索するプロダクトマネージャーにとって重要なツールです。マーケティングキャンペーンやウェブサイトの最適化にも有効です。しかし、これは適切な分析ツールでできることのほんの始まりに過ぎません。カスタマージャーニーの端から端までを解明し、最高のユーザー体験を構築するには、プロダクトインテリジェンスを実践する必要があるのです。
株式会社 Refine では Amplitude EC-CUBE プラグインを提供しています。
このプラグインを利用すると、14種類のユーザー行動ログが自動的に Amplitude へ展開できるようになります。
本ブログで紹介している分析は、全て無料で導入できます。
プラグイン導入の詳細は最後にご案内しています。
プラグインの導入手法については、以下よりご確認ください。また、導入支援のご相談は株式会社 Refine にお気軽にお問い合わせください。
株式会社Refineです。